Trados StudioでXMLファイル用に独自のファイルタイプ設定を作成する

島田 智紀 島田 智紀 シニアソリューションコンサルタント 2024年12月5日 読了目安時間:3分 読了目安時間:3分

Trados StudioでXMLファイル用に独自のファイルタイプ設定を作成する

Trados Studioには「XML 2: OASIS DITA 1.3準拠」、「XML 2: OASIS DocBook 4.5準拠」、「XML2: Author-IT準拠」、「XML 2: MadCap準拠」、「XML 2: AEM Sites XML」、「XML 2: W3C ITS準拠」など、代表的なXMLファイル形式用にいくつかのファイルタイプ設定が用意されていますが、これらのファイルタイプ設定に適合しないXMLファイルを原文ファイルとして取り込むと、既定で「XML 2: 任意のXML(XML: Any v 2.0.0.0)」というファイルタイプ設定が適用されます。

XMLファイルを「任意のXML」で取り込んだ場合は、次のような制約があります。

  • 翻訳対象外のコンテンツも翻訳対象として取り込まれることがある。
  • エディタ内ですべての文字列が同じ書式で表示される。
  • エディタ内ですべての分節のコンテキスト情報が「P」(段落)として表示される。

これらの制約はXMLファイル用に独自のファイルタイプ設定を作成することで回避できます。今回は、その基本的な方法をご紹介します。


XMLファイル用に独自のファイルタイプ設定を作成する基本的な方法

  1. Trados Studioの [ファイル] > [オプション] > [ファイルの種類] 画面を開き、画面右側の [新規作成] ボタンをクリックします。


  2. [XML 2] を選択して [OK] をクリックします。


  3. [ファイルの種類の作成] ウィザードの [ファイルの種類の情報] ページで、[ファイルの種類の名前] にわかりやすい名前を入力し、(独自のアイコン画像がある場合は)[ファイルの種類のアイコン] で独自のアイコンファイル(.ico)を指定し、[ファイルの種類の識別子] に名前に対応する識別子を英数字と半角記号のみで入力し、(読み込みたい原文ファイルの拡張子が「.xml」以外の場合は)[ファイル ダイアログのワイルドカード表現] で拡張子を指定して、[次へ] をクリックします。


  4. [パーサー規則の種類] ページで [要素規則] を選択し、[次へ] をクリックします。


    ※ [XPath規則] は特定の条件が満たされた場合に特定のタグ内のコンテンツを翻訳するといった複雑なユースケースで必要になりますが、今回はよりシンプルな [要素規則] のほうを例としてご説明します。XPath規則について詳しくは、下の手順8の注を参照してください。

  5. [XML設定のインポート] ページで [XML、XSD、またはDTD規則ファイルに基づいて設定を定義] を選択し、[参照] ボタンをクリックします。


  6. 翻訳対象とするXMLファイルの場所を参照して [開く] をクリックします。指定したXMLファイルのルート要素が自動的に検出されて下図のように表示されます(この例では<translation>)。

    ルート要素とは、XML文書のツリー構造において最上位にある要素のことで、XMLファイル内の冒頭と末尾に出現するタグ(下図の例では <translation>と</translation>)に相当します。ルート要素が正しく検出されていることを確認したら、[次へ] をクリックします。

     なお、Trados StudioはXMLを読み込む際、このルート要素の定義を基準にしてどのファイルタイプ設定を使用するかを決定します。
    別のルート要素を持つXMLファイルにも同じファイルタイプ設定を適用したい場合は、[クリックして種類を選択してください] をクリックして [ルート要素名] を選択し、[ここをクリックして規則を入力してください] に別のルート要素の名前を入力してください。


  7. [名前空間] ページでは、そのまま [次へ] をクリックします。(※ 名前空間の設定が必要なケースについては、Trados Studio 2024へのアップグレード時に必要となるXML 1ファイルタイプ設定からXML 2ファイルタイプ設定への移行の手順①-b.のステップ9を参照してください。)

  8. [パーサー規則] ページには、指定したXMLファイルで検出されたすべての要素(タグ)が一覧表示されています。

    [翻訳] 列に [翻訳対象 (保護対象コンテンツ外)] と表示されている場合、そのタグのコンテンツは(翻訳対象外として指定された要素(タグ)内に出現していない限りは)翻訳対象として扱われ、[常に翻訳対象] と表示されている場合は常に翻訳対象として扱われ、[翻訳対象外] と表示されている場合は常に翻訳対象外として扱われます。

    [タグの種類] 列に [構造] と表示されている場合、そのタグは分節の切れ目として扱われ分節内には表示されないのに対し、[インライン] と表示されている場合、そのタグはエディタ内で分節内のインラインタグとして表示されます。


    注: また、XPath表現を使用すると、下の例のようなきめ細かい規則を指定できます。

    【例1: 属性値に基づいて翻訳する要素を選択する
    次のパーサー規則を追加すると、'translate=yes' という属性と値のペアを含むすべての要素(タグ)を翻訳対象にすることができます。言い換えると、translate属性の値がyesとなっているすべての要素(タグ)が翻訳対象に指定されます。
     [XPath]: //*[@translate="yes"]
     [翻訳]: はい


    たとえば、この規則は <project translate="yes"> や <task translate="yes"> や <dueDate translate="yes"> などの要素(タグ)には適用されますが、 <project translate="no"> や <task translate="no"> や <dueDate>(translate属性を含まない要素)などには適用されません。
     
    【例2: XPath構文を使用して要素(タグ)を指定する
    次のパーサー規則は、textという名前を持つ要素(タグ)すべてに適用されます。
     [XPath]: //text


     この規則は、たとえば、 <text translate="yes">、<text translate="no">、<text>(何も属性を持たないtext要素)などのいずれにも適用されます。

    【例3: XPath構文を使用して要素と属性を指定する
    次のパーサー規則は、diagramという名前を持ち、なおかつaddressという属性を持つ要素(タグ)すべてに適用されます。
     [XPath(X)]: //diagram/@address

    たとえば、この規則は <diagram address="xxx"> や <diagram address="yyy"> などには適用されますが、<diagam phone="zzz">(address以外の属性しか持たないdiagram要素) や <diagram>(何も属性を持たないdiagram要素) には適用されません。 

    【XPath表現に含まれる記号の意味と使い方
    //*  -->  すべての階層(深さ、レベル)のすべての要素(タグ)に一致します。
    [...]  -->  [ ] は選択条件の区切りを表します。=、>、< などを使用して属性値を基準に要素(タグ)を指定する場合は、その表現を [ ] で囲みます。
    @translate  -->  translate属性に一致します。
    ='yes'  -->  値がyesに設定されている属性を含むすべての要素(タグ)に一致します。

    ※ 上記の例に関する説明は下記のヘルプページ(英語)の内容に基づいています。詳しくは、こちらのヘルプページも参照してください。
    XML Parser rule example


  9. Trados Studioによって自動的に選択された [翻訳] 列の設定を変更したい場合は、該当する要素名をダブルクリックして [規則の編集] ダイアログボックスを開き、[翻訳] ドロップダウンリストから [継承]([翻訳対象 (保護対象コンテンツ外)] に相当)、[はい]([常に翻訳対象] に相当)、または [いいえ]([翻訳対象外] に相当)を選択して [OK] をクリックします。


    ※ 一部のバージョンのTrados Studioでは、ユーザーインターフェイスの表示言語を日本語に設定していると、[規則の編集] ダイアログボックスのレイアウトが崩れて表示される場合があります。その場合は、上部リボンの[表示] タブで [ユーザーインターフェイスの言語] をクリックして英語を選択し、Trados Studioを再起動すると正しいレイアウトで表示されるようになります。

  10. Trados Studioによって自動的に選択された [タグの種類] 列の設定を変更したい場合は、該当する要素名をダブルクリックして [規則の編集] ダイアログボックスを開き、[タグの種類] ドロップダウンリストから [構造] または [インライン] を選択して [OK] をクリックします。 


  11. エディタ内でインラインタグのコンテンツに特殊な書式を適用したい場合は、該当する要素名(ただし[インライン]要素のみ)をダブルクリックして [規則の編集] ダイアログボックスを開き、[書式] フィールドの右にある [編集] ボタンをクリックします。


  12. フォントを変更する場合は [フォントの指定] をオンにしてドロップダウンリストからフォントを選択します。フォントサイズを変更する場合は [サイズの指定] をオンにしてその下のフィールドの値を変更します。文字色を変更する場合は [色の指定] をオンにしてその下のフィールドの [編集] ボタンをクリックして色を選択します。太字や斜体などのスタイルを適用する場合は右側で該当するスタイルのドロップダウンリストから [アクティブ化] を選択します。書式の設定が終わったら、[OK] をクリックします。


  13. エディタの右端に表示される構造情報は、既定では下図のようにすべて「P」(段落)となっています。


    要素ごとに構造情報を変更したい場合は、該当する要素名(ただし [インライン] 要素のみ)をダブルクリックして [規則の編集] ダイアログボックスを開き、[構造情報のプロパティ] セクションにある [追加] ボタンをクリックします。


    [標準] ドロップダウンリストから、エディタに表示したい構造情報の種類を選択して [OK] をクリックします。


  14. [パーサー規則] ページに戻って [完了] をクリックすると、新規に作成したファイルタイプ設定が[ファイルの種類] ページに表示されます。


  15. ファイルタイプ設定を作成した後に各要素(タグ)の扱いに関する設定などを変更したい場合は、[ファイルの種類] ページの左側のツリーで該当するファイルタイプ設定のノードを展開して [パーサー] を選択し、右側の要素一覧で要素を選択して新しい要素を追加したり、既存の要素の設定を編集・無効化したり、要素の順序を変更したり、他の設定をインポートしたりすることができます。


  16. 他のPC上のTrados Studio環境でも同じファイルタイプ設定を使用したい場合、または特定のプロジェクト用に作成したプロジェクト固有のファイルタイプ設定を他のプロジェクトでも使用したい場合は、[ファイル] > [オプション] > [ファイルの種類] ページ、または [プロジェクトの設定] > [ファイルの種類] ページ中央の一覧で該当するファイルタイプ設定を選択し、[設定のエクスポート] ボタンをクリックしてファイルタイプ設定を .sdlftsettings ファイルとしてエクスポートします。

    その後、別のPC上のTrados Studioで [ファイル] > [オプション] > [ファイルの種類] ページを開き(あるいは別のプロジェクトを選択した状態で [プロジェクトの設定] > [ファイルの種類] ページを開き)、[設定のインポート] ボタンをクリックして .sdlftsettings ファイルを指定するとファイルタイプ設定をインポートできます。


    ※ [ファイル] > [オプション] から行った設定は同じTrados Studio環境で以降に新しく作成されるすべてのプロジェクトに既定で適用されるのに対し、[プロジェクトの設定] から行った設定はそのプロジェクトにのみ適用され、(設定のエクスポートとインポートを行わないかぎり)他のプロジェクトには反映されません。
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島田 智紀
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島田 智紀

シニアソリューションコンサルタント
RWSでTrados製品のコンサルティングをしております。
Trados認定トレーナー。
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