Trados Studio 2022 Service Release 2(SR2)のAI対応機能で効率を向上

Daniel Brockmann 2023年11月29日 読了目安時間:6分
SR2では、翻訳のインテリジェント化を支援する言語処理AI機能をいくつかリリースします。さらに、数百件の問題に対処し、何十件もの顧客チケットを解決し、多数の改善と新機能を導入しています。
Tradosは40年近くにわたり、翻訳者が最高の生産性を発揮できるよう支援してきました。翻訳作業のあらゆる段階に対応し、翻訳メモリ(TM)やニューラル機械翻訳など、その時代の最新テクノロジーから、クラウドベースのワークフローまで、さまざまな機能を活用できるようにしています。そして今、話題の中心となっている新たなテクノロジーが生成AIです。最近、翻訳業界でも旋風を巻き起こし、その影響について議論が白熱しています。
 
当社は、先日発表したとおり、これまでの最新テクノロジーと同じく、翻訳者がこの新たなテクノロジーの可能性を最大限に活用できる未来を確立するため、全力で取り組んでいます。その一環として、Trados Studioの最新バージョンに未来のAI機能を統合し、ユーザーが無料で使用できるようにしています。Trados Studio 2022 SR2では、翻訳のインテリジェント化を支援する言語処理AI機能をいくつかリリースします。 
 
さらに、数百件の問題に対処し、何十件もの顧客チケットを解決し、多数の改善と新機能を導入しています。
 

将来のニーズに対応するための設計

新しいAI機能は、さまざまなシナリオでユーザーをサポートする幅広い機能を提供します。たとえば、次のような新機能です。
 
スマートヘルプ:ユーザーの仮想アシスタントであり、言語処理AIを活用するための主要なインターフェイスであるTrados Copilotを通じてアクセスできます。スマートヘルプは、質問の回答がすばやく簡単に見つかるようサポートします。求めている情報が製品ドキュメントで見つからず、苦労したことがある人なら、検索用語を慎重に選ぶことの重要性を理解していると思います。これからは、もう心配いりません。質問を入力するだけで、Trados Copilotが言語処理AIを使用して質問を分析し、意味を解釈して、ドキュメントから最も適切な情報を見つけ、関連ドキュメントへの直接リンクを提供してくれます。 
 
Smart Review(先行アクセスリリース):「Smart Review」アプリを使用すると、大規模言語モデル(LLM)が言語レビュアーとして機能し、言語品質を0~100のスコアで評価して、Trados Copilotからスコアの根拠が提示されます。ユーザーは、このスコアを基に分節をより詳細に評価するかどうかを決定できます。翻訳が承認されると、当社はそのデータをLLMの評価の継続的な改善に活用できます。これは、Trados Studio Professionalで先行アクセス版として利用できる機能です。ご注意ください。この機能を使用するには、Tradosでお客様のAzure OpenAIサブスクリプションを設定する必要があるため、当社までお問い合わせください。近日中に、お客様自身でLLMをTradosクラウド環境へ簡単に追加できるようになります。
 
Language Weaver:Language Weaverを使用すると、RWSのニューラル機械翻訳(MT)と言語処理AIを組み合わせることができます。Trados Studioでは、Language Weaverを年間600万文字まで使用できます。「Language Weaver」アプリは、ユーザー体験の向上を目的に、既定の機能以外の機能も備えています。その1つが言語マッピングです。言語ペアがプロジェクトの設定に合わせて自動的に調整されます。さらに、Language Weaverを通じて適応型言語ペアにアップグレードすることもできます。アップグレードすると、ポストエディットの内容が取り込まれ、自動適応型言語ペアのデータとして自動的に使用され、翻訳スピードがアップします。 
 
LLMの統合による拡張:RWS AppStoreからダウンロード可能なアプリを使用して、さまざまなLLMをTrados Studioに取り入れることができます。ChatGPTモデル用の「OpenAI Translator」アプリのほか、「RYSTUDIO GPT Translation Copilot」アプリでは、ChatGPT以外にGoogle-PaLM、Claude-2-100k、Sage、Llama-2もサポートしています。このようなアプリは翻訳コンパニオンとして機能し、翻訳作業の改善や言語面の幅広い課題への対応を支援して、最終的には翻訳品質の向上を実現します。
 
事前定義したプロンプトやカスタムプロンプトのリストを使用し、次のようなことができます。 
  • 現在の提案訳に替わる翻訳を生成 
  • 原文/訳文コンテンツに関する追加情報を提供
  • 翻訳の語調を調整
  • 翻訳の長さを短縮
  • ジェンダーバイアスを回避
サードパーティのニューラル機械翻訳プロバイダに対応するための更新:「DeepL Translation Provider」アプリを使用すると、翻訳結果全体で用語やフレーズの一貫性を向上させることができます。新しい用語ベースの作成や、既存の用語ベースのインポート/エクスポートを通じ、さまざまなデータベースやプラットフォームの用語集管理を簡素化できます。さらにMicrosoftGoogle CloudのMTプロバイダに対応するカスタムモデルのサポートも開始しました。この機能を使用すると、カスタム機械翻訳モデルをシームレスに統合し、特定の用語集、スタイル、コンテンツの要件に合わせて翻訳を微調整できます。
 

どんな方法でも作業可能

翻訳テクノロジーに関するインサイト(2023年版)』から、大多数のユーザー(68%)が使いやすいテクノロジーを求めている一方で、新機能に興味があるユーザーはわずか7%であることがわかりました。そのため、SR2では既存の機能を強化し、進化するニーズをより適切にサポートできるようにしました。その一例が、マネージャビュー(ベータ版)の継続的な開発です。これは、現在ある複数のビューを直感的な1つのビューにまとめ、プロジェクトやファイル、レポートの管理を統一されたアプローチで行えるようにするものです。強化されたマネージャビューには、次の機能が追加されています。 
  • 単一ファイルのプロジェクトのサポート:ローカルのTrados Studioプロジェクト、パッケージ、GroupShareプロジェクトの処理に加え、単一ファイルのプロジェクトも管理できるようになりました。これで、ローカルとサーバーベース両方のプロジェクトをサポートできます。クラウドプロジェクトとの互換性は、次回対応予定です。
  • レポートビューの統合:翻訳メモリ(TM)の活用率に関するデータなど、すべてのプロジェクト関連情報を1つのビューで確認できます。 
  • 操作性の向上:プロジェクトのフィルタリングや、プロジェクトを名前、単語数、サイズで並べ替える機能など、操作性が向上しています。
 

どこでも作業可能

Trados Studioでは、デスクトップ環境とクラウド環境がシームレスにつながっているため、プロジェクトの翻訳、レビュー、管理を柔軟に行うことができます。クラウド環境へ提供されるすべての新しいイノベーションや機能は、リリースと同時に利用できるようになります。実際、ここ数か月でオンラインエディタを75回更新しました。さらに、音声入力(ベータ版)のサポートも開始しました。これにより、アクセシビリティと生産性の両方が包括的に向上します。このほかにも、次のような更新を行っています。
  • 用語のクイック追加。用語を用語ベースにすばやく追加できます。これは、デスクトップエディターで提供している機能を反映したものです
  • 入力、削除、全体的なナビゲーションのパフォーマンスを向上させました
  • テキストのドラッグ&ドロップ機能を改善しました
  • 修正や品質評価の作業のサポートを強化しました
  • アジア文字(IME)の入力サポートを改善しました
  • コメントをよりわかりやすく視覚化しました 
Trados Studioのデスクトップコンポーネントがクラウドプラットフォームと円滑に連携するように、この統合環境を一貫して強化しています。SR2でもこのアプローチを継続し、クラウドプロジェクトでの用語検証の導入、クラウド用語ベースを使用している場合の用語認識におけるエントリレベルフィールドの表示、複数の原文言語でのクラウドリソースのサポートを行っています。
 

ユーザーに合わせてカスタマイズ

個人翻訳者、翻訳会社、企業、政府機関を問わず、ローカリゼーション作業のどの段階でも、Tradosはユーザーを念頭に置いた設計になっています。当社は、お客様の成功を支援するため、サービスを強化する新たな方法を常に模索しています。この目標を念頭に、SR2でも新たに視覚的なアクセシビリティ機能を導入しています。このような機能を使用すると、視覚障がいのあるユーザーが「リボン」メニューにあるすべてのTrados Studioコマンドを使用してプロジェクトの管理や翻訳を行えるほか、[パッケージを開く]ウィザードや[新しいプロジェクトの作成]ウィザードを操作することもできます。つまり、JAWSなどの音声読み上げ機能を使用してウィザードにあるすべてのコントロールを読み上げたり、必要なフィールドに音声で入力したりできるようになったということです。アクセシビリティについては、常に重視しており、今後のリリースでもさらに改善していく予定です。

ご覧になったように、このリリースではさまざまな機能の導入と機能強化を行いました。Trados Studio 2022 SR2とともに、MultiTerm 2022の最新Service Releaseもリリースし、互換性を最大限に高めます。さらに、このリリースではMultiTermのリボンメニューにもアクセスできるようになります。

SR2で導入された新機能や機能強化の詳細については、12月12日開催予定のウェビナーにご登録ください。

Trados Studio 2022を使用していないが、このような新機能を活用したいという方は、今こそ翻訳テクノロジーをアップグレードする絶好のチャンスです。また、Trados Studio 2022のすべてのお客様がレベル1 eラーニングを利用できます。翻訳のすべてを可能にするため、Tradosをぜひお役立てください!

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制作者

Daniel Brockmann

Principal Product Manager

RWSのPrincipal Product Managerとして、主にTrados Studioを担当しています。これまでに、トレーニングおよびサポートスペシャリスト、セールスエンジニア、ドキュメントスペシャリストなど、さまざまな役職を通じて、業界で最も人気のある翻訳支援ソフトウェアの確立に貢献してきました。現在は、翻訳プロセスに関わるすべての関係者に生産性向上機能を継続的に提供することに取り組んでいます。

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