Trados Studio 2022のご紹介

Daniel Brockmann 2022年5月25日 読了目安時間:5分
このブログ投稿では、Trados Studio 2022の新リリースについて取り上げます。

Trados StudioMultiTermの歴史を振り返ると、世界の市場をリードする翻訳支援ソフトウェアと用語集管理システムの継続的な開発を担当する製品マネージャーとして、私は今回で8番目のメジャーリリースを迎えることに気付きました。そこで、今回のリリースの新機能の概要について説明するだけでなく、この機会に、ユーザーコミュニティの発展に心からお礼を申し上げたいと思います。

個人翻訳者の方や、翻訳支援ソフトウェアを使用する言語サービスプロバイダまたはその他の企業や組織にお勤めの方には、長年にわたり大変貴重なご意見をいただき、当社にご協力いただいたことに感謝いたします。

長期的な開発アプローチ

長年にわたって成功する製品を管理するための重要な目標の1つは、常に関連性を持ち続けることです。これには、さまざまな優先順位のバランスを取る責任が伴います。

改善の必要のないソフトウェアなどありません。私たちは常にユーザーの小さな悩みに気づき、これらに対処して、ユーザー体験を向上させ続ける必要があります。その一方で、常にユーザーの悩み解決を私たちの最大の関心事にした場合、業界の主要なトレンドや技術革新を見逃してしまうリスクがあり、結果として時間とともに関連性は低下していきます。

要するに、既存のユースケースの改善をおろそかにせず、ユーザーが新しい作業方法を導入できるように、常に製品を再開発し続けることが重要なのです。

Trados Studio 2021は2022に向けた重要な節目

以前のリリースであるTrados Studio 2021は、「再開発」の重要な節目となりました。翻訳プロジェクトの実行において、Trados GroupShareあるいはTrados Studioのみを(普段の業務用ソフトウェアとともに)使用するというすでに確立されたオプションに、クラウドプラットフォームを使用したまったく新しい作業方法が追加されました。Trados Studioとクラウドネイティブなプラットフォームの統合によって、(どこでも、あらゆるデバイスで)柔軟に作業できるようになり、翻訳チーム内での共同作業やエンドツーエンドの翻訳の管理を容易に行えるようになったことで、Tradosのポートフォリオ全体が大転換を遂げました。

クラウドベースの管理機能とブラウザベースの翻訳支援ソフトウェア(オンラインエディタ)を使用すると、ブラウザで翻訳プロジェクトを作成した後、作業のニーズに応じて、翻訳またはレビューの手順でTrados Studioかオンラインエディタのどちらを使用するかを決めることができます。お客様や業界のさまざまなニーズにまんべんなく対応し、当時はもちろん、今でもこれは画期的な転換です。実際、当社のクラウド製品であるTrados TeamTrados AccelerateTrados Enterpriseは、最も急成長を遂げている製品であり、より進化しつつある柔軟な働き方に対応し、翻訳に関わるすべての人に柔軟なソリューションを提供することがいかに重要であるかを示しています。

Trados Studio 2022からクラウド機能を無料で提供

Trados Studio 2022のリリースでは、当社のポートフォリオの転換を記念して、Trados Studioの全ユーザーがこの新しい世界を容易に経験できるように、「パーソナル版」クラウド機能パッケージを完全に無料で提供することにしました。「パーソナル版」クラウド機能パッケージは、Trados TeamとTrados Enterpriseの登録者に提供され、クラウドでできることをいろいろ試したり、デスクトップとクラウドを組み合わせて自分のペースで作業したりすることもできます。

パーソナルクラウド環境へのアクセスは、クラウド機能が統合されたサポート対象のTrados Studio製品(Trados Studio 2021など)のライセンスまたはサブスクリプションを保有している限り無料です。

プロジェクト、TM、用語ベースをクラウドにアップロードするためのウィザード

これをできるだけ簡単にするために、Trados Studio 2022には、ローカル作業をクラウドに移行できる優れたウィザードが3つ用意されています。1つは、クラウドのプロジェクトテンプレートを指定する機能を含む、Trados Studioプロジェクトをクラウドプロジェクトに変換するウィザードです。これにより、クラウドプロジェクトの実行時に、従来のTrados Studioの設定を複製することができます。これには、使用するQAチェッカーや、クラウドリソースを使用した一括翻訳で選択するあいまい一致のしきい値の設定などがあります。

他の2つのウィザードでは、ローカルの翻訳メモリと用語ベースをクラウドベースのバージョンに数分で変換できます。つまり、これにより新たな世界への移行がはるかに容易になったということです。

オンラインエディタに何百もの更新

ブラウザベースの翻訳支援ソフトウェアであるTradosオンラインエディタにも、過去1年間に何百もの変更や更新が行われています。RWSは、業界最高のクラウドベースの編集環境を構築することを目指しています。すでに最高😊と言えるかもしれませんが、当社にとって重要なのは、常に限界を押し広げることです。1つの例は、オンラインエディタのサイドパネルを切り離して移動できることです。これにより、Trados Studioの場合と同じように、たとえばメインモニターで作業しながら、サブモニターでリアルタイムでプレビューを表示できます。

翻訳者とレビュアーにできるだけ最高のクラウドベースの編集体験を提供することは、どこでも好きな方法で作業できるようにするという、当社のビジョンで最も重要な部分です。また、オンラインエディタの優れた点は、ユーザーの手間をかけずにすぐに利用できる更新を継続的に提供できることです。今後のオンラインエディタの開発や改善にご期待ください。

さらにTrados Studio(MultiTermを含む)にも何百もの更新

Trados Studioユーザーにまったく新しい作業方法を提供することと、既存の機能を向上させることのバランスを保つために、2022リリースでは、Trados StudioとMultiTermの両方のユーザーからの要求に応えることに最大の重点を置いています。実際、今回のリリースでは、そのような更新の数が最も多くなっています。これまでも、これら2つの製品の新バージョンにはそのような更新を重ねてきました。

では、私たちはこれまでに寄せられたすべての要望へ対応できたのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。そのような機能が豊富で複雑な製品は、現実的ではありません。しかし当社は、UIへの高まる期待に応え、特定分野のニーズを持つ人にとっても十分有効な信頼性の高い翻訳支援ソフトウェアを提供することがいかに重要であるかを理解しています。

たとえば、Trados Studioには翻訳者やレビュアーが最も時間を費やすエディタ領域がありますが、ここではより明瞭なフォント表示と高度なUnicode文字がサポートされています。MultiTermのフォント表示も更新され、Trados Studioの用語認識と用語検索のウィンドウが大幅に改善されました。整合エディタを使用するユーザー向けには、フォントの調整設定を提供することで、小さいフォントやアジア文字に合わせて文書をとても簡単に調整できるようになりました。220以上の更新があり、その一部は「中身の」テクノロジーの改善や、利用者が限られた機能に関連したものですが、すべてのユーザーを対象にしたものもあります。

多言語Excel:意外とよく使われています!

Trados Studioですでにサポートされている50種類以上のファイル形式の拡張に関して言うと、2022では興味深い新しいファイル形式がいくつか追加されています。1つは多言語Excelです。これは現在、Trados Studioの優れた新アプリを通じてサポートされています。このアプリは、統合されたRWS AppStoreからTrados Studioにダウンロードできます。

多言語Excelの使用事例数は、私個人としては驚くべき新事実でした。ゲームのローカリゼーションでは、多言語Excelは主流の形式の1つであることは知っていました。しかし、ソフトウェアローカリゼーション全般や多言語の用語集(多くの場合、非常に詳細なコンテキスト情報と定義を記載)でも使い道があることがわかりました。用語集では、提供されたコンテキストを考慮して、1つ以上の言語のギャップを埋めることが求められます。

正直に言うと、Excelをローカリゼーション目的で使用することにはあまり気が進みません。非構造化データを取り込んだり、多言語コンテキストで作業する際に発生する多くの例外に対処したりする場合に、それほど柔軟性がないからです。しかし、多くの人がExcelに惹かれる理由はわかります。「すべてをExcelに投入」し、コンテンツを処理する人々に問題に対処してもらうことができるからです。Trados Studioの新しいアプリを使用すると、極めて複雑な多言語ワークシートにも対応できるようになり、多言語プロジェクトを照合して、翻訳・レビューのプロセスを経て、訳文コンテンツを原文と同じ形式で生成できるようになります。この新アプリをぜひお試しください!

ソフトウェアローカリゼーションで新しいMicrosoft .NETをサポート

現在サポートされているもう1つの興味深い新しいファイル形式は、Microsoft.NETのバイナリ形式です。Trados Studioで最初にサポートされたのはバイナリ(つまりテキスト以外の)ファイルでした。ソフトウェアローカリゼーション、マーケティング資料、ウェブコンテンツなど、ドキュメントの種類に関係なく、すべてのコンテンツを1つの翻訳環境で一元管理することを検討している場合、これは興味深い新しい選択肢になります。最も一般的な.NETプラットフォームであるWinFormsとWindows Presentation Foundation(WPF)は、最新の.NETバージョン(執筆当時は.NET 6)までサポートされています。

一部の人から、それはPassoloでできるのでは?と質問されることがあります。Passoloはもちろん、.NETやその他多くのソフトウェア形式を処理することができ、ソフトウェアローカリゼーションに特化した多数の高度な機能を使用するユーザーにとっては、今後も最適なプラットフォームになるでしょう。しかし、クラウドプラットフォームのユーザー向けの形式として実際に誕生したTrados Studioの新しい.NETファイルタイプは、Passoloではサポートされていないクラウドファーストのローカリゼーション戦略を推進する場合や、ソフトウェアローカリゼーションのニーズが他のローカリゼーションのニーズほど重要ではなく、補助的なものである場合に重要です。

言い続けていることですが、重要なことは、お客様のさまざまなニーズを満たすためにポートフォリオを開発することです。

新しいマネージャビューや他機能の開発へも取り組んでいます。

Trados Studioの新リリースに追加された機能のほんの一部しか取り上げることができませんが、このブログによって、当社のアプローチと方向性についていつくか情報をお伝えし、お客様の差し迫ったニーズと将来のニーズの両方にお応えできれば幸いです。もう1つの主な開発は、別のブログ(近日公開)でも詳しく取り上げますが、初期ベータ版のTrados Studio 2022で発表した画期的な新しいマネージャビューです。最新情報をお見逃しなく!

Daniel Brockmann
制作者

Daniel Brockmann

Principal Product Manager

RWSのPrincipal Product Managerとして、主にTrados Studioを担当しています。これまでに、トレーニングおよびサポートスペシャリスト、セールスエンジニア、ドキュメントスペシャリストなど、さまざまな役職を通じて、業界で最も人気のある翻訳支援ソフトウェアの確立に貢献してきました。現在は、翻訳プロセスに関わるすべての関係者に生産性向上機能を継続的に提供することに取り組んでいます。

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