
皆さんこんにちは。SDLジャパンの西海です。
Trados Studioの新しいバージョン2021が、2020年夏にリリースされることになりました。
2021には「Trados Live」という待望のクラウド環境が付属します!
今回のブログではクラウドの機能やメリット、またTrados Studio 2021のアップデートをご紹介します。
*本ブログ内の「デスクトップ環境」とは、PCにインストールをするアプリケーション(Trados Studio)のことを指しています
「クラウド環境」とは、インストールを行わずWebブラウザから作業を行う環境(Trados Live)のことを指しています
概要
初めに全体像をお伝えしますと、Trados Studio 2021は今までと同様デスクトップアプリケーションとなり、追加でクラウド環境が含まれるかたちとなります。すべてがクラウドに1本化され、デスクトップ環境がなくなるわけではないので安心してくださいね。
すでに多くの方にお使いいただいているデスクトップ環境はこのまま継続をし、加えてクラウド環境を平行して進めていくことを考えています。使い慣れたデスクトップ環境と、柔軟性の高いクラウド環境をハイブリッドで活用することを目指しています。
*現状Trados Live単体での販売は予定しておらず、Trados Studio 2021を購入すると1ライセンスにつきTrados Liveが1アカウント付属するかたちとなります。Trados Liveは1年間無料で使用することが可能です
*Trados Liveは個人での共有になります
課題とメリット
SDLが独自に行った調査によると、約75%のユーザが翻訳ツールに関しオンラインとオフラインの組み合わせが欲しいと回答したことがわかりました。時間・場所・端末などに制限の少ない柔軟なツールが求められていると言えます。オンライン(クラウド)とオフライン(デスクトップ)にはそれぞれメリットがあり、Trados Studio 2021はこの2つを組み合わせることで多様化する働き方に対応しやすくなります。
現状、例えば以下のような課題をお持ちではないでしょうか。
【よくある課題】
・オフィスと自宅の行き来など移動が増える際に、常にTradosの入ったPCを持ち歩く必要がある
・複数のPCを使用しており、ファイルの移動が面倒
・MacOSでTradosを使用できない
・データをセキュアにバックアップできていない
・PCに負荷がかかる など
Trados Liveを活用することで上記のような課題を解決することができます。
【クラウドのメリット】
・どの端末(PC、タブレット、スマートフォン)からでも作業が可能
・データがクラウド上にあり、各端末にファイルを移動(ダウンロード)する必要がない
・クラウド上のデータはセキュアに保存される
・WindowsOS/MacOSどちらでも使用できる
・動作が直接PCのスペックには依存せず、またPCに負荷も直接はかからない
・インストール作業が不要
・ライセンスのアクティブ化/非アクティブ化が不要
・自動でアップデートされ常に最新バージョンを使用できる
クラウドだけでは不安、今までのデスクトップ環境も使用したい!と思う方も多いかと思います。
デスクトップにはデスクトップのメリットがあります。
【デスクトップのメリット】
・翻訳/レビュー機能をフルで使用できる
・ネットワークから切り離したオフラインでも作業が可能
・動作がネットワークの安定性や速度に依存しない
・作業データを外部に出さず、端末内で完結できる
・使い慣れたTrados環境であること
このようにクラウドとデスクトップはそれぞれメリットがあり、どう使うかはあなた次第です!それぞれにフィットした使い方を見つけてみてくださいね。 ではここからは具体的な機能をご紹介します。
Trados Live(クラウド)
クラウドである「Trados Live」はTradosデスクトップとほぼ同等の機能を持ち、以下のような一連の作業をWebブラウザ上で行うことができます。
・プロジェクト作成
・翻訳
・レビュー
・検証
・訳文生成
【ダッシュボード】
ブラウザ上でTrados Liveにログインをすると、まずダッシュボード画面が表示されます。
ダッシュボードではプロジェクト全体の情報や処理をした量などを把握できます。
【プロジェクトビュー】
プロジェクトビューではTradosと同様プロジェクトを一覧で確認することができます。
言語ペア、進行度、締切日、ステータスなどの情報も表示されます。
画面左側にはフィルタ機能があり、言語、日付、ステータスで表示するプロジェクトをフィルタリングすることもできます。
【プロジェクト作成】
プロジェクト作成はTrados Live上でも行うことが可能です。「新しいプロジェクト」をクリックすると以下のプロジェクト作成画面が表示されます。基本的にはTradosと同じ感覚で進めていくことができます。プロジェクト名、締切日、言語方向、プロジェクトテンプレートなどを設定し、原文ファイルを選択またはドラッグ&ドロップします。
次のステップでは「翻訳エンジン」の設定を行います。こちらはTradosデスクトップにはないTrados Live専用の項目です。といっても難しいものではなく、翻訳メモリ、用語ベース、機械翻訳エンジンの3つをセットで設定するものです。使用したい翻訳エンジンを選択し、調整をしたい場合は翻訳メモリや用語ベースをその場で変更します。
翻訳エンジンは、事前に何パターンか準備をしておき、プロジェクト作成時にどのエンジンを使用するかを選択します。
よく使う言語ペアの設定や、日常的に依頼が来る特定のクライアント用のプロジェクトなどで便利です。
最後にプロジェクト全般の設定を確認します。一括タスク、翻訳メモリの設定、検証設定などです。こちらはTradosと同様の項目です。最後に「作成」ボタンをクリックするとプロジェクトが作成されます。
【オンラインエディタ】
Webでそのまま作業をしたい場合はオンラインエディタを開くと翻訳を開始することができます。Tradosに慣れているユーザは直感的にすぐ使うことができる画面です。オンラインエディタの右側には翻訳メモリと用語ベースの検索結果が表示され、Tradosと同じ感覚で翻訳作業を進めることができます。
変更履歴や検証機能もあり、翻訳だけでなくレビューもオンラインエディタ上で進める事が可能です。翻訳とレビューが終わったらWebから訳文ファイルをダウンロードします。
【翻訳メモリビュー】
Tradosデスクトップの「翻訳メモリビュー」に相当する画面で、Trados Liveでも翻訳メモリを開きメンテナンスを行うことが可能です。登録済みの文節を修正したり削除をする場合に使用します。
【用語ベースビュー】
またTrados Live上では用語ベースの中身も確認と編集が可能です。通常は「MultiTerm Desktop」を起動し用語エントリの追加や修正、削除を行いますが、ブラウザ上でも操作できるようになります。操作はシンプルで用語の追加や編集、画像の追加などを簡単に行えます。
【Trados 2021とTrados Liveの連携】
Trados Liveで作成したプロジェクトや翻訳メモリは、Trados2021上でも確認と作業が可能です。逆にTrados2021で作成したプロジェクトをTrados Live上で作業することもできます。
「Trados Live ⇔ Trados 2021」間は連携し、お好きな環境で作業を進められます。
*Trados Liveはチームでの共有ではなく、個人での共有です
Trados 2021デスクトップの新機能
続いて、デスクトップ2021の追加機能をご紹介します。
【SDL AppStoreとの統合】
2021ではSDL AppStoreがTrados画面に統合されました。AppStoreはTradosに機能を追加したり、便利なアプリケーションをダウンロードできるページです。統合により別途AppStoreページをブラウザで開く必要はなくなり、検索と機能拡張を行いやすくなります。また「Update All」というボタンがあり、インストールしたアプリケーションを一括で最新の状態にアップデートすることもできます。
アプリは250以上リリースがされています。ご自身のニーズに合わせカスタマイズをしてみてくださいね。
【翻訳メモリの自動認識の向上】
Tradosには「認識済みトークン(旧称:固定要素)」という、エディタ画面上では青い下線で表示される要素があります。例えば数字、Eメールアドレス、URL、頭辞語などです。認識済みトークンは翻訳を行わないものとして、自動で訳文側に置換されるという性質があります。
2021ではこの認識済みトークンの日付、時刻、通貨の認識を設定でカスタマイズできるようになります。これにより認識してほしい形式で処理ができるので、翻訳やチェックの効率を上げることができます。
認識済みトークンの日付の設定画面
認識済みトークンの通貨の設定画面
【TQAの操作性が向上】
TQAは翻訳の品質を客観的に評価するためにスコアをつけ集計する機能です。TQAは例えば、新しい翻訳者の評価や機械翻訳の評価などに活用されるケースもあります。2021ではTQAの操作性が向上しクリック数が減ったことにより、従来よりもTQAのハンドリングが簡単になります。
【最強なフィルタリング】
2021ではさらにパワーアップした表示フィルタが登場します。エディタビューで特定の分節のみを表示したい場合にさらに細かな条件づけをできるようになりました。
以下のフィルタリング項目が追加されています。
・繰り返し以外の分節
・分節番号
・分割された分節
・結合された分節(段落を越えた分節の結合も含め)
・あいまい一致率(範囲を入力)
・原文分節および訳文分節におけるテキスト/ハイライトの色
・タグがある分節
・タグの内容
・QA検証のためのランダムなフィルタ
・自動修正されたあいまい一致分節(レンチマークの分節)
・分節を修正した日時(期間を入力)
また「それ以外」の条件でフィルタリングができるリバースフィルタが追加されました。条件付けした分節以外を表示することができます。
他にも、
・フィルタをかけた分節を様々な色でハイライトできます(訳文生成時にも反映されます)
・フィルタをかけた内容をSDLXLIFFへエクスポートが可能になりました(QuickMergeされたファイルは対象外です)
Freelanceライセンスの言語制限の撤廃
今までFreelanceライセンスはTradosインストール時に5言語を選択しその範囲内で使用するという制限がありましたが、2021ではこの制限が撤廃されます。インストールプロセスがよりシンプルになり、言語選択を再設定する手間も必要なくなります!
*1つのプロジェクトで選択できる訳文言語数が3つまでになります
無料で使えるニューラル機械翻訳
Trados Studioをお持ちの場合は、1アカウント(法人)あたり毎月無料で50万字まで弊社のニューラル機械翻訳を使用することが可能です。 機械翻訳はTrados StudioとTrados Liveどちらにもコネクトが可能です。修正した機械翻訳結果は翻訳メモリに蓄積し活用することができます。
翻訳メモリの結果ウィンドウにNMT(ニューラル機械翻訳)結果が表示され、訳文側に挿入できます。
【Trados Studioのエディタ画面】
一括翻訳は翻訳メモリから一括で候補を挿入する機能です。NMTと接続すると候補のない分節にはNMT結果を一括で挿入することも可能です。
【一括翻訳の結果】
機械翻訳について、詳しくはこちらのブログをご確認ください。
以上、Trados 2021とTrados Liveの紹介をいたしましたが、いかがでしたでしょうか。
新しいTradosは以下のような場面で活躍します。
例えば、
・オフィスとご自宅を行き来する機会が増える場合
・WindowsPCとMacPCを組み合わせて使用する場合
・出先でタブレットやTradosの入っていない端末からパッと作業を行いたい場合 など
またクラウドの導入ニーズと、デスクトップ環境の継続したニーズが混在している際にも最適です。
ぜひこの機会に最新バージョンの2021をご検討いただければ幸いです。
過去のバージョンTrados 2019、2017、2015のアップデート内容はこちらのブログをご確認ください。
https://www.sdltrados.com/jp/blog/studio_2019_2017_2015_update.html
またTrados Studioの基本的な概要を確認したい方はこちらをご確認ください。
https://www.sdltrados.com/jp/blog/intoduction-sdl-trados-studio.html
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