
Community Advanced Display Filter -さらに高度な表示フィルタ (1)
こんにちは、SDLジャパンの土田です。こちらのブログで、Trados Studioを中心としたSDL製品の技術的な情報をお届けしています。
Trados Studio 2017以降に搭載の[高度な表示フィルタ]機能はご利用いただいているでしょうか。以前から存在した[レビュー]タブの[表示フィルタ]に加えて、[高度な表示フィルタ]ではさらに詳細なフィルタリングが行なえます。
具体的には、以下のようなフィルタリング設定が使用可能です。これらはすべて[高度な表示フィルタ]特有のものです。
- 正規表現による原文・訳文テキストのフィルタリング
- 訳文が原文からコピーされている分節や、自動反映された分節のフィルタリング
- 複数の属性条件を組み合わせによるフィルタリング(たとえば100%一致だがステータスが翻訳却下の分節、など)
- コメントに指定のテキストが含まれている文節や、特定のユーザーからのコメントがついている文節
- 文書構造(見出し、本文、リスト、表など)によるフィルタリング
上記のように細かなフィルタリング設定項目を持つ[高度な表示フィルタ]ですが、さらに進歩を遂げた表示フィルタが機能拡張プラグインとして提供されています。
「Community Advanced Display Filter」というプラグインです。今回はこちらについてご紹介したいと思います。
Community Advanced Display Filterの入手
Community Advanced Display Filter はSDL AppStoreから入手できます。以下のURLにアクセスし、[ダウンロード]のボタンをクリックしてください(SDLアカウントへのログインが必要になります)。
https://appstore.sdl.com/jp/language/app/community-advanced-display-filter/849/
[ダウンロード]をクリックするとバージョンの選択を求められます。Community Advanced Display FilterはTrados Studio 2017およびTrados Studio 2019に対応していますが、それぞれに応じたバージョンのプラグインをダウンロードしてください。
以下のようなアイコンのインストーラーファイルがダウンロードされます。
こちらをダブルクリックすると、インストールウィザードが開始されます。Trados Studioはあらかじめ終了させてください。
プラグインの利用規約が表示されますので、[I agree with this license’s terms and conditions]にチェックを入れ、[Next]をクリックします。
コンピューターの環境によっては、このチェックボックスが隠れてクリックできないことがあります。その場合はスペースキーを押すとチェックが入りますので、[Next]をクリックしてステップを進めてください。
プラグインをインストールするTrados Studioのバージョンを選択し、[Next]をクリックします。
インストールが開始されます(非常に短時間でインストールが完了しますので、この画面自体はほんの一瞬しか表示されません)。
以下の画面でインストールのステップは完了です。
Trados Studioを起動し、何か翻訳対象ファイルを開いてみましょう。[エディタ]ビューに移動すると、[表示]タブの[情報]セクション中に、[Community Advanced Display Filter]という項目が新しく追加されています。
こちらをクリックすると、以下のようなウィンドウが立ち上がります。
こちらはフローティングウィンドウですので、縦横を見やすく調整できます。それぞれのフィルタリング設定について詳しく見て行きましょう。
Community Advanced Display Filterには魅力的な機能が数多く備わっていますが、今回はまず、テキスト内容によるフィルタリング機能を中心にお話ししたいと思います。
テキストによるフィルタリング – 原文と訳文を組み合わせる
テキストによるフィルタリング機能の1点目として、「原文と訳文のOR検索が可能」という特色が挙げられます。
例えば下記の例では、「原文に“Note”というテキストが含まれている」あるいは「訳文に“注意”というテキストが含まれている」という条件で分節を抽出します。
従来の[高度な表示フィルタ]でも原文と訳文のテキストを組み合わせたフィルタリングは可能なのですが、こちらはAND検索のみとなり、OR検索には対応していません。
テキストによるフィルタリング – 正規表現の後方参照に対応
つぎに、テキストによるフィルタリングが「正規表現の後方参照に対応している」という点についてご紹介します。
例えば、訳文が日本語の時に、「私は私の仕事を終えました」というテキストと「僕は僕の仕事を終えました」というテキストを、同時に抽出したいとします。このような場合、以下のような正規表現を使用します。
(私|僕)は\1の仕事を終えました
このように「私」と「僕」のそれぞれの場合に応じて「私の仕事」および「僕の仕事」という文字列を検出する正規表現パターンを「後方参照」と言います(ここでは\1と指定されている箇所です)。Community Advanced Display Filterではこちらを使用することができます。
テキストによるフィルタリング – タグの内容を検索対象に
テキストによるフィルタリング機能の中で、最も画期的なものをご紹介します。それは「タグの中の内容を検索し、フィルタリングの対象にすることができる」という点です。
例えば<picture name=”logo”/>というインラインタグがバイリンガルファイルに抽出され、原文中に存在したとします。Community Advanced Display Filterではタグ名である「image」も属性地である「logo」もどちらも検索対象とすることが可能です。
「それ以外」の条件でフィルタリング – リバースフィルタ
最後にCommunity Advanced Display Filterの最も特徴的なフィルタ機能についてお話します。
例えば「原文に半角数字を含まない分節」をすべて抽出したいとします。しかし実際には、以下のように「原文に半角数字を含む分節」で正規表現を組む方が簡単です。
.*\d.*
このような時に、「原文に半角数字を含む分節」で正規表現パターンを入力し、上部の[Reverse]ボタンをクリックします。
これで「原文に半角数字を含まない分節」がすべて抽出されています。
このリバースフィルタの機能は、テキストによるフィルタリングだけでなく、すべての条件によるフィルタリングで使用することができます。例えば属性に対して「完全一致以外の分節すべて」といったようなフィルタリングや、コメントに対して「特定ユーザー以外からのコメントが追加された分節すべて」などのフィルタリングが可能です。
今回ご紹介したのは、Community Advanced Display Filterの一部の機能に過ぎません。次回の記事でも引き続き、このプラグインの機能についてお話します。