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「翻訳単位を同化する」とは何か

こんにちは、SDLジャパンの土田です。こちらのブログでTrados Studioを中心としたRWS製品の技術的な情報をお届けしています。

「メインの翻訳メモリの更新」一括タスクで既定および推奨となっている「翻訳単位を同化する」というオプションについてお話したいと思います。


「メインの翻訳メモリの更新」について

一括タスクには「メインの翻訳メモリの更新」というメニューがあります。現在エディタビューで開いているSDLXLIFFの内容をメインの翻訳メモリに一括でインポートするという処理です。

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どのような時に使用する一括タスクかと言うと、プロジェクトマネージャーが翻訳者に作業をパッケージファイルで依頼したとします。翻訳作業の完了後、プロジェクトは返却パッケージの形で返送されますが、そちらをプロジェクトマネージャーが元のプロジェクトに対してインポートします。

この段階では、元のTMは更新されません。プロジェクトマネージャーはこの翻訳をレビューにかけ、最終的に承認された段階で、元のTMに反映させ、今後の翻訳作業に活用するという処理が必要になります。このTMへの反映を行う際に、「メインの翻訳メモリの更新」というメニューが使用されます。

また、対訳形式のExcelをTMにインポートしたいといった場合にも「メインの翻訳メモリの更新」が使用されます。この使用法に関しては、下記のブログ記事をご覧ください。

Excelを翻訳メモリに変換(Trados Studio 2015以降)
https://www.sdltrados.com/jp/blog/ExceltoTM.html


同一の原文分節で訳文が異なる場合の処理

さて、この一括タスク「メインの翻訳メモリの更新」を実行する際に、[訳文分節が異なる場合は次のように処理する]という設定項目があります。

例えばSDLXLIFFファイル上の分節をインポートするに当たり、翻訳メモリ中に原文の内容が同じ翻訳単位がすでに存在していたとします。そして訳文の内容だけがインポート対象の文節と異なるといった場合にどのような処理を行うか、この設定項目で選択します。

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ここで既定であり推奨となっているオプションが、「翻訳単位を同化する」です。推奨であるにも関わらず、残念ながらやや抽象的な表現となっています。

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他のオプションからまず説明します。インポート対象の分節に、原文分節が既存のもの同じで訳文分節が異なる翻訳単位があった場合、各オプションに応じて次のような処理がなされます。

新しい翻訳単位を追加する
既存の翻訳単位を保持し、インポートした翻訳単位は必ず新規の翻訳単位として追加します。

既存の翻訳単位を上書きする
インポートした翻訳単位は必ず新規の翻訳単位として追加します。

既存の翻訳単位を変更しない
必ず既存の翻訳単位を優先し、インポート対象の翻訳単位は無視します。

最新の翻訳単位を保持する
最終更新日時を比較し、より新しい方の訳文を保持します。


「翻訳単位を同化する」オプションの仕様

※現在一部不具合により2017以降のバージョンでは、原文または訳文に日本語が設定されていると「既存の翻訳単位を上書きする」と同じ動作になります

それでは、「翻訳単位を同化する」オプションを選択することで、どのような処理がなされるでしょうか。

ここで重要になるのが、翻訳単位に記憶されている「コンテキスト情報」です。

TMに翻訳単位が登録される際、分節自体のテキスト情報とともに「直前の分節の情報」が記録されます。これがコンテキスト情報です。ドキュメントの最初の分節であり直前の分節が存在しない場合も、そのようなコンテキスト情報として記録されます。

コンテキスト情報が同一の場合、更新日時が新しい方の分節が優先され、既存の翻訳単位は上書きされます。コンテキスト情報が異なる場合、別の翻訳単位として新たに追加されます。

つまり、コンテキスト情報の比較によって、「最新の翻訳単位を保持する」と「新しい翻訳単位を追加する」の双方の挙動を使い分けると言うことができます。

また、コンテキスト情報が同一でカスタムフィールドが異なっている場合、TUは上書きされますがカスタムフィールドは双方の値が保持されます。

下記のオンラインヘルプ記事およびナレッジベース記事も併せてご参照ください。

Handling of custom fields in Translation Units when using "Merge Translation Units" or "Keep most recent translation units" option in SDL Trados Studio 2017
https://gateway.sdl.com/communityknowledge?articleName=000003331&_ga=2.19965112.1603953256.1586858573-1383591312.1580277658


コンテキスト情報が削除される例

このように、コンテキスト情報の比較によって「翻訳単位を同化する」オプションの挙動が異なるのですが、次のような場合はコンテキスト情報自体が削除され、「新しい翻訳単位を追加する」と同様の挙動を取りますので注意が必要です。

[翻訳メモリ]ビュー上でTMを編集した時

[翻訳メモリ]ビューからTMを開き、訳文の内容を直接編集した場合、コンテキスト情報はクリアされます。したがって、インポート対象の分節がどのようなコンテキスト情報を持っていたとしても、上書きはなされずに新しい翻訳単位が追加されます。

[エディタビュー]上で[訳文分節のクリア]を実行した場合

一括翻訳で100%一致が適用されている分節の訳文において、[訳文分節のクリア](alt + delete)を実行し訳文を消去した場合、SDLXLIFF上に保持されているコンテキスト情報もクリアされます。こちらの場合でも、上書きはなされずに必ず新しい翻訳単位が追加されます。