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バイリンガル レビュー機能とその注意点

みなさま、こんにちは。SDLジャパンの土田です。こちらのブログでSDL Trados Studioをはじめとする弊社製品についての実用的な情報をお届けしています。

今回は、Trados Studioのバイリンガル レビュー機能についてお話します。Trados Studio 2011において導入されたもので、ある程度の歴史を持った機能と言えます。

バイリンガル ファイル上で作成された翻訳成果に対して、翻訳担当者とレビュー担当者は通常、プロジェクトパッケージ(あるいは返却パッケージ)でやり取りを行い、翻訳の承認あるいは修正という形でレビューが実施されます。この場合、レビュー担当者もTrados Studioのユーザーであることが前提となります。

しかしレビュー担当者がTrados Studioを使用していない場合でも、バイリンガル ファイルの内容をMS Wordファイルに書き出すことでレビューを実施することが可能です。

また、レビューを実施したWordファイルを再びTrados Studioに読み込み、レビュー結果および訂正箇所をTrados Studioのバイリンガル ファイル上に反映させることも可能です。これがバイリンガル レビュー機能の概要です。


バイリンガル レビューファイルのエクスポート

それではこの機能を使ってみましょう。[エディタ]ビューで翻訳作業を完了し、[レビュー]タブに切り替えます。左上の[バイリンガル レビュー用にエクスポート]をクリックします。

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簡単なウィザードの後、バイリンガル レビュー用のWord ファイルが生成されます。[エクスポートした文書が含まれているフォルダを開きますか?]というダイアログが表示されます。[はい]をクリックし、生成されたファイルのフォルダを確認します。

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特に指定しない限り、保存場所はプロジェクト フォルダ内に[External Review]というフォルダが自動的に作成され、その下の訳文言語名のフォルダに書き出されます。ファイル名は、こちらも特に指定が無い限り[原文ファイル名.review.docx]となります。

このファイル名の中の[.review.docx]の箇所は変更しないようご注意ください。こちらを、レビュー担当者にメール添付などの方法で送付します。


バイリンガル レビューファイルによるレビュー作業

レビュー担当者は受け取ったレビュー用Wordファイルを開きます。以下のような画面となります。

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レビュー担当者は「Target Segment」の欄に修正を加えていきます。このWordファイルでは[変更履歴の記録]が有効になっていますので、修正箇所は赤で表示されます。また、適宜コメントを加えることも可能です。

レビュー完了後、このWordファイルを翻訳者に返送します。翻訳者は返送されたWordファイルを再びTrados Studioに読みこみ、レビュー結果をバイリンガルファイルに反映させます。


レビュー済みファイルのインポート

[エディタ]ビューの[レビュー]タブよりに切り替えます。左上の[バイリンガル レビューからの更新]をクリックします。

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ウィザードの[追加]>[特定のレビュー文書]より先ほどのレビュー用Wordファイルを選択すると、レビューによる訂正箇所およびコメントが反映されていることが分かります。既定では分節ステータスは[翻訳却下]に変更されます。

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バイリンガル レビュー使用時の注意点

このように便利なバイリンガル レビュー機能ですが、いくつかの注意点があります。

事前に訳文フィールドをすべて入力済みにする
バイリンガル レビューファイルは、原則として訳文がすべて入力され、翻訳作業が完了した段階でエクスポートしてください。空の訳文フィールドが存在する状態でバイリンガル レビューファイルをエクスポートすると、インポート時にエラーが発生することがあります。

レビューファイル上でタグを追加・削除しない
バイリンガル レビューファイル上で、タグを手動でタイプすることは控えてください。インポート時のエラーを起こす可能性があります。タグの追加・修正はあくまでTradosのエディタ上で行なってください。

レビューファイルの訳文セルに改行を追加しない
レビューファイルの訳文セルに改行を入力しないよう注意してください。インポート時にエラーの原因となります。

元のバイリンガルファイルを変更しない
レビュー用Wordファイルを一度エクスポートした後は、レビュー結果をインポートするまで、元のバイリンガルファイル自体を修正することは控えてください。インポート時にレビュー用Wordファイルとの整合性が取れなくなり、エラーが発生します。

レビュー用Wordファイル上の原文セグメントを変更しない
レビュー用Wordファイルはあくまで訳文のレビューおよび修正にエクスポートされたものです。したがって原文の改変がなされた場合、やはりインポート時に元のバイリンガルファイルとの整合性が取れなくなり、エラーが発生します。

バイリンガル ファイル上に空白の原文分節が存在していない
これはあまり見られないケースなのですが、バイリンガル ファイル上で原文の編集を行い、ふたつの分節の統合を手動で行った結果、原文分節のひとつが空白になってしまったとします。そこからエクスポートしたレビュー用ファイルはインポート時にやはりエラーが出てしまいます。しかしながらTrados Studio 2017より「段落を越えた分節の結合」が可能となったため、こちらの機能を使用することで、このような事態を防ぐことが可能です。

以上、バイリンガル レビュー機能についてご紹介しました。こちらを用いることで、Trados Studioを使用していないレビュー担当者も翻訳フローに参加することができます。