
用語ベースに属性を追加する
こんにちは、SDLジャパンの土田です。こちらのブログで、Trados Studioを中心としたSDL製品の技術的な情報をお届けしています。
今回は、用語ベースを管理する上でのヒントをご紹介したいと思います。
ある用語に対して、複数の訳語が存在するとします。たとえば、ある英語の用語に対して、以前は日本語の訳語Aを当てていたが、検討の結果、訳語Bの方が適切であると判断され、今後は訳語Bで統一をする必要がある、といった場面です。
このような場合、古い訳語Aも、新しい訳語Bも、どちらも用語ベース内で保持する必要が生じることがあります。望ましくない古い訳語も用語集で参照可能にした方が、より確実に誤用を防ぐことができるからです。
もちろん、それぞれに対して「どちらが望ましい訳語であるか」が判別できるよう、一種のタグを加える必要があります。MultiTerm上で用語ベースに属性を追加すると、このような使用法が可能になります。
既存の用語ベースに属性を定義する
それでは、既存の用語ベースに属性を追加してみましょう。たとえば、Glossary Converterを使用してすでに既存のExcel用語集から用語ベース(.sdltb)に変換したファイルがここにあるとします。こちらをMultiTerm Desktopで開きます。
[用語ベース]ビューに移動し、[定義]を右クリックします。
メニューより[編集]を選択すると、用語ベースを新規作成した時と同様の用語ベース作成ウィザードが立ち上がります。
[次へ]をクリックして手順をスキップし、[説明フィールド]の画面まで進みます。
左側の[フィールド名]に追加したいフィールドの名前を入力し、[追加]をクリックします。このように右側の[説明フィールド]に表示されます。ここでは、「Status」というフィールドを新たに追加しましょう。
説明フィールドに追加された「Status」を選択し、[プロパティ]をクリックします。
[データ タイプ]よりどのような入力形式のフィールドに設定するかを選択します。ここでは[属性値リスト]を選択しますが、他にも自由入力のテキストボックスにしたければ[テキスト]を選ぶことができます。また作成日などを入力したい場合は[日付]を選択します。
次に、リストの候補となる属性値を定義します。今回は、承認された用語であることを示す「Approved」と、使用禁止用語であることを示す「Forbidden」を設定します。
次の画面に進みます。[エントリ構造]の画面では、設定したフィールドをエントリ内のどの位置に置くかを決定します。Statusのフィールドはそれぞれの訳語に対して設定したいので、右側で[Status]を、左側で[Term Level]を選び、中央の[追加]をクリックします。
[次へ]をクリックすると、ウィザードは完了します。
上のような画面が表示されますので、用語ベースの再読み込みを行ないます。
既存の用語エントリに属性を追加する
用語ベースを再度読み込むと、用語の下に[属性の追加]というメニューが現れています。こちらをクリックすると、先ほど設定した「Status」が追加可能な属性として表示されます。
このエントリでは、「device」という英語の用語に対して、「機器」および「装置」という2つの日本語の用語が設定されています。例として、「機器」を承認済みの用語、「装置」を使用禁止の用語と設定してみましょう。
「機器」の用語に対して、属性[Status]を追加し、さらに属性の値として[Approved]を設定します。
そして用語「装置」に対しても同様に属性[Status]を追加し、こちらの値は[Forbidden]としてみます。
Trados Studioで用語の属性を識別する
Trados Studioでの翻訳作業において、このように用語に対して設定した属性はどのように利用できるでしょうか。先ほど属性を追加した用語ベースを使用し、翻訳作業を行ってみましょう。
原文中に「devices」という言葉が含まれていますので、[用語認識]ウィンドウには用語ベース上で「device」に対応する「機器」という用語と「装置」という用語がどちらも表示されています。
ここで、[用語認識]ウィンドウの[検索結果の設定]ボタンをクリックします。
[検索結果の設定]ウィンドウが開きますので、[用語フィールドを表示]が有効になっていることを確認し、[フィールドを選択]をクリックします。
フィールドの選択画面が開きますので、訳語側の表示させたいフィールド(ここでは「Status」)を有効にします。
すべて[OK]をクリックし、エディタ画面に戻ります。[用語認識]ウィンドウに、訳文言語の用語だけでなく、それぞれに設定したフィールドの値が表示されています。
フィールド値を[用語認識]ウィンドウに表示させることで、承認済みの用語であるか使用禁止の用語であるか、翻訳作業時に判別することができます。
さらにこの機能を用語検証機能に組み合わせることも可能です。
[プロジェクトの設定]より、[検証]>[用語検証機能]>[検証の設定]にて、[禁止用語として設定されている可能性がある用語がないかチェックする]を有効にします。
さらに[用語属性値リスト]よりフィールド名を、[禁止値の選択]より検出対称にする属性値を指定します。
ここでは、「Status」フィールドの「Forbidden」という属性値を禁止値(検出対象の属性値)に設定しています。
このように設定した後、実際に訳文を入力してみます。使用禁止の用語である「装置」を訳文に含め、翻訳を確定したところ、エラーが表示されました。
エラーの詳細は「用語 "装置" が誤って使用されています。この用語は禁止用語として定義されています。」というものでした。
このように、用語に設定した属性値をTrados Studioの検証機能に役立てることで、翻訳作業中にリアルタイムの用語チェックを行うことが可能です。